「すみません……私の不注意でお手数を……」

「いえ。
それより、萌ちゃんは……」


萌ちゃんのお父さんは力なく首を横に振った。

まだ見つかってないのか……。


本当にどこに行っちゃったんだろう……。


「……萌、何だってこんな日に……」

「こんな日?」


あたしが聞くと、萌ちゃんのお父さんは少し顔をうつむき気味にしながら口を開いた。


「今日は……妻の命日なんです」

「え……」


萌ちゃんのお母さんは萌ちゃんが幼稚園に入ったのとほぼ同時期に病気で亡くなったらしい。


でも、萌ちゃんはお母さんを恋しがる素振りは一切見せたことがないし、仕事が忙しいお父さんを心配してるしっかりした子だなと思っていた。


だから、こんな風にフラフラとどこかへ行ってしまうような子じゃないと思ってたけど……