俺は急いで玄関に行ってドアを開ける。
「……助かった」
栞奈の顔を見て安堵する。
「そんなに大変なの……?」
「話しかけても返事が来ない……」
俺には手が負えない……。
とりあえず、栞奈をリビングに通した。
まだテーブルに顔を伏せている蓮……。
「蓮ちゃん」
栞奈が声をかけると、蓮はゆっくり顔を上げて振り向いた。
「岬……?
何で………」
「俺が呼んだ」
「そっか……じゃあ、俺は帰……」
「帰らなくていい。
お前のために呼んだんだから」
俺がそう言うと、蓮はソファの上に頭を載せるようにして天井を見た。
そして……ポツリと静かに呟いた。
「何か……もう疲れた……」
俺達が蓮の弱音を聞くのは……その時が初めてに近かったかもしれない。

