「……栞奈さん」


洋輝君に声をかけられ、あたしはゆっくり顔を上げた。


「俺……栞奈さんにも感謝してます。
栞奈さんがいなかったら大地と仲直りできてなかったと思うし……」


……洋輝君がまっすぐあたしを見た。


「栞奈さん……あの時俺に言いましたよね。
自分の本当の気持ちを話せば相手もそれに応えてくれるって……」


……言ったよ。

確かに……洋輝君にそう言った。


「栞奈さんは……先生に伝えたんですか?
自分の本当の気持ちを……」


……あたしはハッとして洋輝君の顔を見た。


「……岬」


監督があたしを呼ぶ。

監督の方を見ると、監督はお父さんのような優しい目をしていた。


「……行ってこい」


……あたしは走り出した。


伝えなくちゃいけなくて……

きっと、今言わなかったら……絶対後悔するから。


……とにかく、走った。

大和の元へと――