For 10 years

「…ママ…ママ…」



そのうち蒼太くんが、絢華ちゃんの服を引っ張って……



「…そ、うた……」


「…パパ……ねんね?」



蒼太くんは優太くんを指差しながら、不思議そうにそう言うのを聞いて、俺の目からも……


涙がこぼれた。


そんな中でも、



「…ん……パパ、ねんね、だね」



蒼太くんにそう答える絢華ちゃんを見て、絢華ちゃんは母親なんだと……


悲しくても辛くても、母親をしなきゃならねぇんだと、胸がすっげぇ痛くなった。



「ちょっと、いいですか?」



警察官が絢華ちゃんに話し掛けた。



「……はい……」



優太くんの事故の経緯や状況を聞いた。


家に帰る途中、対向車線を走っていたトラックが、センターラインを越えて、優太くんが運転する車に突っ込んだ。


優太くんは即死だった。


優太くんの所持品を手に取り、優太くんの名前を呼びながら涙を流す絢華ちゃんを見て、俺も涙が止まらなくなった。