For 10 years

「…うっ……ゆ、うた?……なん、で……こんなに、傷だらけ、なの?……なん、で、なんにも、……言わない、の?」



そう言った絢華ちゃんは、優太くんの頬を両手で挟んで……


キスをした。



「ゆう、たっ…?……目を、覚まして、よっ!……一緒に……家に、帰ろうよっ!……ゆ…ぅたぁぁ……うわぁぁぁぁーーっ……」



こうやって優太くんを前にして、泣き叫ぶ絢華ちゃんを見て……


傍に行ってやらねぇと……


何か言ってやらねぇと……


頭ではそう思っているのに、俺は一歩も動けなかった。


五年間という長い期間想っていたのに、いざという時には何もできないんだと……


俺はこんなにも無力なんだと……


認めざるを得なかった。