父に注意されたことでまた座席にもたれかかり、


かたわらに置いてあったペットボトルを手に取った。


「そんなに登ったんだ。日本人でも登ったことない人たくさんいるのに」


そう言ってキャップを開け、お茶を飲み下す。


「そりゃあ、日本人の姓が欲しいと言って婿養子入りした人だからね」


そう言って母は快活に笑った。


「へえ。それにしても暑いな…」


美波は手をうちわのようにパタパタあおぐ仕草をする。


「ごめんね。わたしが車のクーラーついてると気持ち悪くなっちゃうから…」


母は申し訳なさそうに眉を下げる。