「うーん、そうだねぇ」
今度は駅員が困ったような顔を見せる。
「あの、10分くらいで戻って来ますから。電車にタダ乗りしても、どうせ降りる駅で切符が必要でしょう?」
美波が食い下がると、駅員は一転、笑顔になった。
「はは、それもそうだね。じゃあお入りなさい」
そして、美波(と縁)をホームにいれてくれた。
ちらりと駅員のいる部屋を見てみると、こちらの様子を伺っている気配はない。
これで安心して成仏する作業にとりかかることが出来る。
と、そこで縁がいきなり声をかけてきた。
「のう、美波よ」
「ん?なんだよ」
「お前、10分とか勝手に制限時間決めおって。間に合うと思っておるのか?」
「そんなこと言われても、仕方ないだろ。あんまり長くいると駅員さんに怪訝に思われそうだし」
