そこで縁が妙案を言った。
「なるほど」
ポン、と手をうつ。
すぐさまその案を実行すべく、改札のとなりの朝早くから部屋で仕事をしている駅員に近づく。
窓口に立ち、声をかけた。
「あの、すみません」
駅員は顔をあげて美波の姿を確認すると、作業をやめて近付いて来た。
かなり年配の駅員だった。
「どうかしたの?」
「あの、ホームの中で落し物をしちゃって、それで取りに行きたいんですけど…」
用件をつげると、駅員は親切にも
「それは大変だね。何を落としたのかな?教えてくれたら私が探しに行くよ」
と言ってくれた。
しかし、それでは困る。
「ありがとうございます。だけど自分で探せるんで…ホームの中に」
