電車に乗り込み、座席に座る。

縁は座らずに、美波のそばに立ったままだ。

ドアが閉まると電車はすぐに動き出し、窓の外の景色が流れていく。

ガラス越しに、先ほどの霊の姿を一瞬だけ見ることができた。


ふと思う。


なぜ自由に動き回らず、あの場所にいるのだろう。


もしかして、今まで気付かずにいただけで、

五年間このホームの中にいたのだろうか?

何の理由があって…。

おとなしくこちらに背を向けている縁を見る。


そんなことは、こいつにもわからないのだろう。