「誰」

と思わず聞いてしまうほどに別のもの、
人間に変身していた。


相変わらず目に包帯が巻かれていて、
狐のお面をつけている。

そしてなぜか包帯を巻かれている部分が増えている。
腕や首、足など。

肩につくかつかないくらいに伸びたボサボサの髪は先程の狐の毛と同じ金色。


前髪も、鼻をおおうほどに伸びていた。


着ている着物は色褪せていて、ところどころやぶれている。

性別 は男か女かはわからなかった。

「なんでそんな姿に化けたんだよ?もっとましな人間の姿になれなかったのか」

と文句をいうと、

変身した狐は心外そうに頬を膨らませた。


「失礼な。これは私の元の姿じゃ。私は元来人間だったが、山の神らしくあのような仮の姿をしているのじゃ」

妖狐=山神

という観念でしたか。いやはや。

「じゃあ普通の人間だったお前がなんで山の神に?」

「私は、毎日潜り込んで日が暮れるまで遊んでいるほどあの山が大好きな童じゃった。しかしある日、いつものように遊んでいるとうっかり足をすべらせて崖から…」

狐の口調は重く、暗いものに変わっていた。

「そしたらなぜか成仏せずにいつまでも魂が山に残ってしまっての。これは天が
私にここを守る霊となれと言ってる気がしてな」

「まあそんなこんなで山を守る神になったわけか」

美波が相槌をうつと、狐は深く頷いた。


「でもそれって、ただの地縛霊じゃないのか」