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「ただいまー」

施錠されていた引き戸を開けて、家に入る。
声をかけても返事はない。

この時間帯はまだ、林蔵は職場にいる。

「邪魔するぞ」
狐はそろりと三和土に足を踏み入れる。

「お前の部屋はどこじゃ」
「2階」

そう答えると階段を見つけるや否や美波より早く上っていってしまった。

遅れて美波が部屋に入ると、ちゃっかり狐はベッドの上でくつろいでいた。

何かにこらえるように、美波は声をかける。


「…おい」
「なんじゃ」

「電車の中でも思ってたけどな…そばに獣がいるのは落ち着かない」

「ペットと同じじゃ。犬や猫と思えばよかろう」
狐はあっけらかんとした態度をとる。

「全然違う。包帯を目に巻いてるわきんきら光って眩しいわ」

「…どうしろというのじゃ」

はーっ、と盛大にため息をつかれる。

「だからさ、なんか変身とか出来ないのか?神なんだろ」

「できんこともない」

「じゃあやってくれよ」

そう頼むと簡単に了承してくれ、狐はそこで優雅にバク宙を決めてみせた。

そして…