ずいぶん身勝手な理由だった。
「じゃあ、やっぱり幽霊はお前の力で見れるように?」
「え、あ、もちろんじゃ」
言葉の割に挙動不審な狐は、先ほどから美波と目を合わせようとしない。
まあ包帯で巻いてるから目は見えないんだけど。
「本当か」
狐と顔が向き合うように移動するも、すぐに別の方向を向いてしまう。
「おい」
顔の正面に立つ。
また避けられる。
「ちゃんと」
顔の正面に立つ。
また避けられる。
「人の顔」
顔の正面に立つ。
また避けられる。
「見ろって!!」
最終的には半ば無理やり、手で頭をつかんでこちらの方に向けた。
