「はは…」
バカバカしい。
否認していた存在に命を助けられたということも
こんなあり得ない話を納得出来る自分も。
ふと、狐に向き直る。
「あの時助けてくれてありがとう」
すると狐は意外そうに、そして面白そうに
「怒らんのか。余計なことをしないで欲しかった、生きていても辛い…なんてな」
と問う。
「別に」
確かに、あの時家族で死ねた方が幸せだったかもしれないなんて考えはいく度となく頭をよぎった。
けど
「それより、なんで俺1人を助けたのかということの方が気になる。今はお前らみたいなのが見れて世界観変わったし」
望んで死んだわけではない幽霊だってたくさん見た。
そうしたら嫌でも命の重さを実感し、人生を大切に生きようと思うものだ。
「…そうか。ではお前1人を救ったのは…まあ、力が足りなかったという私に負がある理由と…」
「と?」
「お前はまだ若い、それに幽霊の存在を信じていないのが癪に触ったのじゃ」