「あれっ!?」 ハンドルを握った父が、焦っているような声を出した。 驚いた美波は、おにぎりを包んだラップを剥がしながら前を向いた。 「どうしたの、そんな声出して」 「は、ハンドルが動かないんだよ」 「「へっ!?」」 美波は母と同時に素っ頓狂な声を上げた。 「ほら見てくれ」 必死にハンドルを右に左に動かそうとする父。 しかしびくとも動かない。 顔からは冷や汗が出ていて、冗談などではないことが分かる。