幼いころから、幽霊などといったものは信じてはいなかった。


「夜の墓地に、ゆらゆら光る人魂が…」


ある人は恐怖に顔を歪め、

でもどこか自慢げに

自分の体験したことを語る。


「この写真を送った人物とは以後連絡が途絶え…」

テレビの怖い話を特集している番組では

わざとらしいほど視聴者の恐怖を煽る。


怖い、とは思う。

まだ幼稚園児のとき、テレビの大画面にいきなり血塗れの女の顔が映し出されたときなど、

泣きながら母親の膝に顔をうずめた記憶もある。


だけど幽霊の存在なんて、これっぽっちも信じてはいなかった。

なぜゆらゆら光るものを人魂と決めつけるのか。


本当は人がいて、懐中電灯を持っていたかもしれない。


そもそも、人魂など見たことがないのになぜ分かったのだろう。


それに、と思う。