「オレの料理に惚れこんで、

ここを決めたのは知ってる。

ウエイトレスとして雇ったが、

お前がこの条件を呑めば、

仕事の後、料理を教えてやってもいい」


・・・

逃げ出そうとしていた私の体は、

ピタリと動きを止めた。

・・・

私は浩輔の作る料理に、

惚れこんでいるのは確か・・・

・・・

両親が度々、

このフランス料理店に

私を連れてきてくれて、

ここのシェフの弟子になりたいと、

本気で思った。

・・・

でも、実は料理なんて、

目玉焼きくらいしか作れない。

そんな私でも、ちょっとした夢位

持ってもいいよね?

そんな軽い気持ちで、ここを受けた。

・・・

まさか、

浩輔がこんな目的で、

私を雇ったとも知らず、

ぬか喜びしていた自分が恥ずかしい。