黄金時間が過ぎるまで

「…あの子、鳴海が好きだったんだね…」

話を聞いた後で、千歳はそう言った。

「…うーん、いろいろあるよね」

少し照れたように、鳴海は訳の分からない事を言った。



しばらく二人は黙って、屋上からの眺めを見ていた。

「これで見おさめか…」

ポツリと千歳が呟いた。   

「よいしょっ、と…私もう帰るけど、鳴海は?」

立ち上がりながら、千歳は聞いた。

「…まだ用事があるから」

「そっか…じゃ、元気でね、体に気をつけて…」

「うん…千歳もね」

鳴海はかすかに、口元だけで笑った。

「じゃあね」

千歳は軽く挨拶をすると、鳴海に背を向けて出口へ歩いて行った。

そのままふり向かず、ノブに手をかけた時…ああ、これでもう、会う事もないんだろうな…と思った。

後ろ手に扉を閉めると、今度は本気で涙が出た…       

″…いろいろ言いたい事がある気がしてたのに…いざとなると、たいした事は言えないんだなぁ…″

そんな事を思いながら、千歳は学校を後にした。

最後に、あの場所でふり返ると、千歳は校舎を目に焼き付けた…