「…OK」

鳴海はカラのカップを握りつぶすと、マフラーを肩にかけた。

…屋上か、寒そうだな…と心の中で呟く。



人けのない廊下を気の向くままに歩いていると、時々明かりのついている教室の前を通り過ぎた。

教室から人の話し声が聞こえてくるが、冷えた空気の中では、かき消されていく…

そんな校内を歩くのは、思いのほか気分がいい事に鳴海は気づいた。

「つもるかなー」

楽しげに歩いている隣の千歳を見て、フッと笑ってしまった。

「…そうだねー」

実のところ鳴海は寒さに弱く、冬はダメなたちだった。

″…けど…こーゆーのは、悪くないかな…?″

寒さゆえの不思議な空間…何もかもが静かに息をひそめている…

そんな中、三年生最後の冬は過ぎて行った…