「鳴海君、部活あるならいいよ?」

「ああ…大丈夫、何もやってないから…」

「あーそうなんだー、私と一緒だね」

日誌を書き終え、身の回りの荷物をカバンにしまうと、千歳はのんびりと座り直した。

「鳴海君は、どこ中出身?」

お互いヒマ人であると分かり、他愛のない話をはじめた。

「近江中」

「へー」

「そっちは?」

「あ、私は楓中…あれ?鳴海君、近江って確か、中・高・大学一貫の名門校じゃなかったっけ?」

「うん、そうだね」

「って…何でまたここに?」

エリートコースを蹴ってまで、ここに入る理由とは一体なんなんだろう…と千歳は首を傾げた。

「そっちは?」

「へ?」

鳴海は質問には答えず、反対に聞き返した。

「私?そうだな…実は本当は、ここに来るつもりじゃなかったんだけど…たまたま、この学校の前を通りかかった時にね、あ、何かいいな…って思って…」

千歳は校庭の方を見ながら、ボンヤリと言った。

そんな様子を、かすかな微笑をもって聞いていた鳴海は、意味ありげに「ふーん」と相づちをうった。

「で、鳴海君は?どーして?」