「雪…降りそうだね…」

放課後の教室から見上げた空は、薄灰色にどんよりと低く曇っていた…

校舎全体がこの空の下で、雪を待っているみたいに静かだった。

人けのない教室に千歳と鳴海は、各々好きな席に腰かけてボンヤリと空を見ていた。

「今日は冷えたからね…」

暖房の効いた部屋にもかかわらずセーターを着込み、そのうえ黒のロングコートに包まりながら、鳴海は言った。

手には温かいココアの入った紙コップが握られている…

「その格好、ジジイみたい…」

千歳は少しあきれて、その姿をまじまじと見た。

鳴海は目が合うと、ニッコリ笑って言った…

「冬は寒いけど…雪はいいよね…」

「うん、そうだね…」

雪の降る前というのは、まるで時が止まってしまったかのような錯覚を起こす…

二人はしばらく、不思議な錯覚に浸っていた…


どれぐらい経ったのか…千歳が空を見つめたまま、ポツリと言った。