″…兄には、こんな所にも心配してくれる人がいるのか…″

鳴海は少し、うらやましく思った。

″自分には昔から、人に心配されたという記憶があまりない…それはちょっと、寂しい事なんじゃないかな…″

鳴海がそんな事を考えていると、水原が突然さらりと聞いてきた。

「…オレさ、前から気になってたんだけど…お前さん、どうして気配消してるの?」

鳴海は言葉の意味が分からず、キョトンとしてしまった。

「はい?」

「勘違いならいーんだよ…でもお前さん、教室にいても存在薄いしさ。自分からそうしてるみたいで心配だね…」

鳴海は無表情に、水原の顔をまじまじと見た…そしてしばらく沈黙した後で、水原が口を開いた。

「どう?」

「…当たり…です」

やれやれと、鳴海は降参をした。

「…何で?」

ずけずけと遠慮なく聞いてくる…水原はこういう人物だ…

鳴海にとって、気を使わない水原の態度は、悪くないと思った…