「鳴海は…確か進学せずに、お父さんの会社を継ぐんだったね」

「はい…」

「そっか…うん…分かった。鳴海しっかりしてるしね…私は心配してないよ…」

担任の水原は、そう言うと資料のファイルを閉じた。


放課後の進路指導室…三年生は進路の最終確認のため、一人ずつ呼び出されては、担任と面談する時期だった。

普通の場合、30分はかかってしまう面談が三分で終ってしまったので、水原は頭をかいた…

「…以上で面談は終わり!…ずいぶん早く終っちゃったね。楽にしていいよ…コーヒー飲む?」

水原は立ち上がると、二人分のコーヒーを入れて、鳴海の前の机に置いた。

「…で、本当のところ、鳴海はやりたい事ってなかったの?…あ、担任としてじゃなくて、オレの好奇心で聞いてるんだけどね」

「…高校に…入る前は、何かあったような気がしてたんですけど…」

「忘れちゃった?」

「そうかもしれないし…元々なかったのかもしれないし…高校でやりたい事が見つかってしまうのは、困ると思いませんか?オレの場合…」