放課後を告げるチャイムが鳴り響いた…

ここは清音高校、三年F組の教室。

人影は日直の二人を残すだけで、教室は静まり返っていた。

運動部の活動しているざわめきが、窓ガラス越しに聞こえてくる…

春の柔らかな日差しをボンヤリと眺めながら、戸じまりをしていた鳴海は、日誌をつけているもう一人の日直に声をかけた。

「こっちは終わったけど、手伝おうか?」

「あ、ありがとう」

その生徒は日誌を書く手を止め、隣の席に座った鳴海の方を見た。

「えっと…鳴海君だっけ…今日の出来事、何かないかなぁ…」

「…あれは?」

「え?」

「女子が教室で、さわいでたでしょ?」

「ああ、あれか、いいかも…」

このクラスになって初めて日直が回ってきたのは、四月も終わりの頃だった。

お互いに顔は知っている程度で、話した事はなかった。

「千歳さん、で、あれって何だったの?」

「あー…子猫が乱入して来てねー」

「ああ…なるほど…」

千歳は日誌に書き込みながら答えた。