授業中の廊下というのは、全く静かで人が通る事はない…

西館の端にある保健室など、もちろん人っ子一人いなかった。

保健医の里美ゆりは、健康診断のファイルをまとめていた。

ズルズルと引きずる音がしてふり向くと、戸にもたれかかり、真っ青な顔をした女生徒が何とか立っていた。

「せんせい〜ちょっと休ませてください〜」

呼吸がゼイゼイと上がって、苦しそうだ。

「あら、まぁ大変、大丈夫?」

「ねればなおります、ベッドかりますね〜〜せんせい」

這うように歩いて行くと、のろのろとした動作でベッドにもぐり込んだ。

「くすり飲む?」

ベッドの脇に来て、カーテンを閉めながら里美は聞いた。

「ねれば…なおります、どーも」

「じゃ、お休みなさい」

のほほんと笑いながら、里美は仕事に戻った。



5時間目のチャイムが鳴り、校内がざわめきはじめた…

休み時間になると、ムクリと女生徒は起き上がってベッドから出た。

「先生、ありがとうございました。次の授業には出るので失礼します」