「なんで分かるかな…静君ってカンがいいよね」

後ろから男の声がすると、パーテーションの影から人が現れた。

「イスが一つ温かい…」

「刑事みたいな事言うかな…」

その男はすねながら、鳴海の隣のイスに腰かけた。

「はい、コーヒーでいい?静時君、鳴海君はほうじ茶ね」

ほんわかした笑顔で、お茶を渡され鳴海は仕方なく受け取ると、もう一人の鳴海に向き直った。

「なぜここにいる…」

「もちろん、静君に会いたくてに決まってるでしょう」

「あら、私はおまけ?」

里美が口をはさんだ。

「里美さんが一番で、こっちがついで」

里美にウィンクをして答える。

「…で、そのついでに何の用?兄キ」

鳴海がそうたずねると、鳴海宗一、24歳…鳴海の兄は答えた。

「まぁまぁ…いいでしょ?用がなくても…元気そうだね…父さんは元気?」

「…あまり良くはないよ…」

「…怒ってる?静君」

鳴海は一瞬、答えにつまった。が…小さく息をはき出すと、こう答えた。