「…経っちゃダメなの?」

「うん、そうだね」

「何で?」

「何もしていない方が時間って、長く感じるでしょう?だから…」

鳴海は、また謎の笑みを浮かべた…千歳は訳が分からないと、首を傾げる…

「いーよ、分からなくて」

「そうね…」

いつもの事ながら秘密主義なヤツだと思ったが、まぁそれも面白いかと、あきらめる事にした。

「あ、ところで次の日曜日、ヒマ?」

「…何で?」

「あ、うん…映画の試写会のチケットもらったんだけど、行く?」

千歳はカバンの中から、二枚のチケットを取り出すと鳴海に渡した。

鳴海はしばらく、じっとそれを見つめると、目線はそのままに答えた。

「ごめん、この日、都合が悪い…」

「そっか、実は私も都合が悪くてさ、誰か行ける人がいたらあげようかと思って…」

鳴海はフッと息をはくと、何やら呟いた。

「?どうかした?」

「ううん…別に」

その時、″ピンポン・パン・ポーン″と校内放送がかかった。