「お…おかげで、この学校にはほとんどいないね、兄が片っ端から送ったみたいだから…」

まだ笑っている…

そのやり方が本来のやり方と、ギャップがあり過ぎるのだそうだ。

″…鳴海の兄っていったい…″

「…なんだか鳴海のお兄さんって、すごい人だったんだね」

「え?うん、そうだね…当時は有名人だったらしいよ」

「今も…?」

「今?二十歳過ぎれば、ただの人だって…」

「打ち止め?」

「らしい…でも良かったんじゃないかな…本人、結構その力で苦労してたみたいだから」

「…仲がいいんだね」

「へ?」

「お兄さんと」

「普通だよ…たぶん」

そう言うと、急にいつもの無表情に戻ってしまった。

「…?」

気のせいだろうか…一瞬、鳴海の動きが止まったように見えたのは…

千歳は何か気になって質問しようとすると、鳴海が立ち上がった。

「帰ろっか?」

「あ…うん」

千歳は「?」と感じたが、気のせいだと思う事にした。

「帰りに何か食べていこーか?」

「あ、それいいね」

「何がいい?」

「あんみつ、桜庵の」

「甘い物?んじゃ自分は…」

二人は食べ物を決めながら教室を出ると、夕日に染まる廊下を歩いて行った。

黄金色の夕暮れが、穏やかに過ぎて行く…