「…ねぇ鳴海」

寝不足気味の顔でふり向くと、千歳は後ろの席の主に話しかけた。

放課後の教室…いつもの二人の他には、誰も居残っていない。

千歳と鳴海は何をする訳でもなく、放課後の時間を楽しんでいた。

千歳の方は、たまに小説を読んでいたりもしてるが、二人とも他愛のない話しをしている事が、ほとんどだった。

「何?」

ボンヤリと、頬杖をついていた鳴海が無表情に答えた。

「金縛りって、なった事ある?」

「…あるよ」

「そっか…実はさ、昨日それのせいで、ほとんど寝かせてもらえなくて…そうゆーのってある?」

「…なくもないけど」

「あれって、どうしたらいいのかなぁ」

「困るね…昔、兄が言っていたような気がするな…」

「お兄さん?お兄さんも霊感強いの?」

「うん…かなりね、うちの母方の家系が強いらしいよ」

「なるほど…」

「自分は…兄ほどじゃないけどね」

…猫の霊と話せるだけでも、充分だと思うけど…と千歳は心の中で突っ込みを入れた。