苦労して手に入れた鍵は、格別な重みがあった。       

「これでお互い好きな時に、ここへ来れるって訳だね」

「うん…」

何かをやり遂げた満足感が、二人の中に広がっていく…

″こーゆーのも悪くないな…″

どちらがともなく、そんな事を思った。



西の空に夕日が落ちて行くと、さっきまで白かった雲がキレイなピンク色に染まり、金色の夕暮れを流れて行った…

少しづつ変わってゆくその風景を、二人は静かに眺めていた。

穏やかに時が過ぎて行く…

「のど…かわいたね」

「え?」

突然、鳴海が口を開いた。  

「何か飲んでいこーか」

「うん…そうだね、あ、紅茶がいいな」

「自分は、コーヒーかなぁ…」

「んじゃ、行きましょっか」

「そうしましょう、そうしましょう」

辺りが暗くなりはじめた頃、二人は屋上を出た。

″ガチャ″と鍵の閉まる音がして、屋上は元の通りの無人になった。

初夏色の一日が、過ぎて行く…