べつだん鳴海は何もなかったように静かに言った。

「さえちゃんは、いいね」

「うん」

いつの間にか、また少女が鳴海の隣に座っている…

「お兄ちゃん、やくそくおぼえてくれてたんだね」

さえは嬉しそうに鳴海を見た。

「うん、それもあるけどね…ずっと来たいなーって思ってたから」

本当に、ここに来れて良かったと鳴海は思っていた…

放課後の静かな校内…その中でも一番、人から忘れられた存在の場所で目を閉じていると、自分がここにいる事をしみじみと実感する事が出来た。

今年の春、新入生として清音高等学校に入学してから、これといった部活にも入らず、放課後静まり返った校内にいるのが好きだった。

「さえちゃんは、何してるの?」

ん?と鳴海を見上げた少女は、向かい側に並んで置いてある机に移ると答えた。

「まってるの」

「誰を?」

「自分だよ」

鳴海はやっぱり…と心の中で呟いた。

″この子は残留思念なんだ…″