−翌日の放課後−                      「鍵?鍵かぁ…」

「うん」

「鍵、鍵ねぇ」

頬杖をつき、千歳さつきは向かい側の机の上に座っている、鳴海静時の顔を見た。

鳴海は色白・黒髪の、割と整った顔立ちだったが、不思議と印象がぼやけている…そのせいか、目立つ事はなかった。

やせぎみで身長のわりに、ひょろりと見える鳴海から、千歳は視線をすぐ左手にある扉に移すと言った。

「うーん…針がねとかは?」

鳴海は少し肩をすくめると、答えた。

「すみませんが、不器用なもので…」

「そこの窓は?」

扉の横…天井近くに作られた換気窓を、千歳は指差した。

「君なら…ギリギリ行けるかもね。でも、かなり高さあるけど?」

「そうね…」



放課後の校舎の一角…最上階の踊り場で、千歳と鳴海は話し込んでいた。

「で、鍵ってどこにあるの?」

千歳がたずねた。

「…たぶん職員室じゃないかな…」

「誰が管理しているんだろうねぇ」