授業が終わると教科書をカバンにしまい、放課後の図書室へと向かうのが、千歳さつきの日課だった。             
図書室の窓際には、個人用机が二列に並んで置かれ、千歳はいつもの席に着くと外を眺めた。

一番上の階にある図書室からは、この辺り一帯に広がる田んぼが見渡せ、帰宅する生徒の姿が点々と見えた。

窓を少し開けて、カバンの中から読みかけの小説を取り出すと、読みはじめた。



いつの間にか、雨が降り出していた。ふと顔を上げて外を見ると真っ暗だった…        

「6時か…」

時計に目をやり、一つ伸びをすると帰る事にした。

廊下に出ると、シーンと静まり返っていて、生徒のいる気配はなかった…

千歳は、こういう感じが好きだった。

誰もいない学校に、一人でいるんだなぁ…という感覚…

階段を下りはじめた時、人の声を聞いた気がして足を止めた。

「?」

不思議に思いながら、耳に神経を集中していると、やっぱり聞こえてくる…

誰かが、まだ残っている…

ふと興味がわいて、声のする方へ向きを変えた。

最上階の踊り場へ…