親しみやすい外見と社交的な性格のおかげか、モテない方ではなかったし。
それなりに恋愛経験は積んできたつもりだった。

だけど。
あの日、世界は180度変わってしまった。

サキさんとのセックスが本物だとしたら、今まで俺がしてきたものは偽物だったのかもしれない。

「また、こうやって会ってくれませんか」

俺と寝たのは、単なる気紛れだって分かってる。

「どういう意味?」

彼女はイイ女だし。
第一、俺は出来の悪い部下だし。

一度ヤッたくらいで恋愛対象になれるなんて思ってない。
それくらいの分はわきまえてる。

だけど。
一度の過ちにするには惜しいくらい、甘い夜だった。

「サキさんの気が向いたときで構わないから、こうやって俺と寝て欲しいんです」

俺がそう言ったときの彼女の反応は、今も記憶に新しい。

まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたかと思うと。
次の瞬間、堰を切ったように笑い出した。

「そんな誘い方されたの、初めて」

職場では見たことのない、その無邪気な笑顔に。
俺は不覚にも恋に落ちてしまったのだ。