身勝手な彼女と、都合のいい俺(短編)

「もしもし」

「和田くん?」

サキさんの声を久しぶりに聞いた気がした。

そういえば、部長のことを聞いてから、一度も言葉を交わしていなかったかもしれない。

「何してるの?」

サキさんの声はセクシーで。
俺の胸は、性懲りもなく高鳴ってしまう。

「何って…」

さすがにユミちゃんとラブホに行くとこです、とは言えない。

「ちょっと、友人と出掛けてて」

ユミちゃんは同じバンドのファン仲間だし、実際にライブに行ったんだから、嘘ではないよな。

「和田くんが外出なんて、珍しいわね」

その言い方に少しムッとする。

そりゃ、今までは貴女がいつ来てもいいようにしてましたからね。