身勝手な彼女と、都合のいい俺(短編)

「主任と、部長…?」

とっさに会議室に目をやったけれど、扉の向こうの様子は見えない。

「そうじゃなきゃ、女性があんな早く主任になれるはずないってみんな言ってますよ」

その情報源はひどく不確かでありながら、信憑性は高かった。

だって、サキさんは確かに優秀だけど。
優秀な人間が必ずしも出世できるわけじゃない。
それが女性なら尚更だ。

もともと違う部にいたサキさんを。
その能力に惚れた部長が、強引に主任待遇で企画部に引き抜いた、と聞いていたけれど。

もしかしたら、部長が惚れたのは仕事だけの話じゃなかったのかもしれない。