身勝手な彼女と、都合のいい俺(短編)

「嘘、マジで?!」

俺は思わず立ち上がる。

週末のライブは、ハコが小さいからプレミアになっていた。

正直、行きたい。

だけど同時に、頭の中にサキさんの顔が浮かぶ。

「何か先約ありました?」

急に顔色を変えた俺を、ユミちゃんが覗き込む。

「いや…」

約束なんてあるはずない。

だって、俺たちはそんな関係じゃないんだから。

ただ。

週末に彼女が来る可能性がゼロでない限り、女々しい俺は好きなバンドのライブさえ乗り気になれないのだ。

どうすべきか、返答に困っていたとき。

「私語はほどほどにね」

後ろからサキさんの声がした。