「お、リルベルド! 遅いぞ!」
入るなり、そんな声がした。
「みんな、ちゃんと戻ってきてたんだな」
「当たり前よ!」
「……なんだ? そのコは?」
俺は一瞬言葉に詰まった。その隙を、彼女は見逃さなかった。
「ディーマス様の伴侶となる、リーリアと申します」
にこやかに、とんでもないことを口走る。
「おいこら待てッ!」
言うが、遅い。
「え? 恋人? しかも何でこんな若い子!?」
「リル、お前何時の間に?」
「……ちょっと、ボクらが仕事に出てる間に、ナンパしてたわけ?」
「……い、いや、その……」
「俺はフォグ・オーレン。剣が主だ。よろしくな、お嬢さん」
「ティルティ・ミスフォーよ。魔道士。気弾が得意よ」
「ボクはレンフォード・クリック。魔剣士だよ」
「ありがとうございます。皆様。
魔弓士のリーリア・ジュレアでございます」
メルフィースの名前は出さないように、俺から厳重に言っておいた。ジュレアは母親の姓らしい。
「ジュレア?」
しわがれた声が響く。
「ユーフィリア・ジュレアの血縁か?」
「母をご存知ですか?」
「母? ……ほうほう、なるほど……」
酒場の一番奥にいたのは、黒いローブとマントを纏った魔道士。名前はクディクロゥつって、腕はいいんだが歳がちょっと……な。
「リルベルド・ディーマス」
俺をフルネームで呼ぶクロゥ。こういう時は、大抵何かある。
「とんでもない逸材を連れて来おったな」
「……逸材?」
「知らんのか?」
俺以外のみんなも知らないようで、首を傾げる。
「二十年程前に引退したからのう。
ユーフィリア・ジュレア。弓と回復術の腕で知られ、美しく、『白銀の弓姫』と呼ばれた女よ。
……詠唱破棄は出来るのか?」
最後の言葉は、リーリアに向けられていた。
「ええ、魔弓全部と一部の回復魔法でしたら」
ひく。
クロゥとリーリア以外全員が凍りついた。
魔弓士で詠唱破棄!? 冗談じゃないにも程がある!
「ナイフの手ほどきも受けております」
笑顔で続けるリーリア。
……結局。彼女は俺たちに同行することになってしまった。俺としては、仲間がやんわりと断って追い返してくれるのを期待してたのだが。
……他力本願の罰か。
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