LeliantⅢ


「お、リルベルド! 遅いぞ!」
 入るなり、そんな声がした。

「みんな、ちゃんと戻ってきてたんだな」
「当たり前よ!」
「……なんだ? そのコは?」

 俺は一瞬言葉に詰まった。その隙を、彼女は見逃さなかった。
「ディーマス様の伴侶となる、リーリアと申します」
 にこやかに、とんでもないことを口走る。

「おいこら待てッ!」
 言うが、遅い。

「え? 恋人? しかも何でこんな若い子!?」
「リル、お前何時の間に?」
「……ちょっと、ボクらが仕事に出てる間に、ナンパしてたわけ?」

「……い、いや、その……」

「俺はフォグ・オーレン。剣が主だ。よろしくな、お嬢さん」
「ティルティ・ミスフォーよ。魔道士。気弾が得意よ」
「ボクはレンフォード・クリック。魔剣士だよ」
「ありがとうございます。皆様。
 魔弓士のリーリア・ジュレアでございます」

 メルフィースの名前は出さないように、俺から厳重に言っておいた。ジュレアは母親の姓らしい。

「ジュレア?」
 しわがれた声が響く。
「ユーフィリア・ジュレアの血縁か?」

「母をご存知ですか?」
「母? ……ほうほう、なるほど……」

 酒場の一番奥にいたのは、黒いローブとマントを纏った魔道士。名前はクディクロゥつって、腕はいいんだが歳がちょっと……な。

「リルベルド・ディーマス」
 俺をフルネームで呼ぶクロゥ。こういう時は、大抵何かある。
「とんでもない逸材を連れて来おったな」

「……逸材?」
「知らんのか?」

 俺以外のみんなも知らないようで、首を傾げる。
「二十年程前に引退したからのう。
 ユーフィリア・ジュレア。弓と回復術の腕で知られ、美しく、『白銀の弓姫』と呼ばれた女よ。

 ……詠唱破棄は出来るのか?」

 最後の言葉は、リーリアに向けられていた。
「ええ、魔弓全部と一部の回復魔法でしたら」

 ひく。
 クロゥとリーリア以外全員が凍りついた。

 魔弓士で詠唱破棄!? 冗談じゃないにも程がある!

「ナイフの手ほどきも受けております」
 笑顔で続けるリーリア。

 ……結局。彼女は俺たちに同行することになってしまった。俺としては、仲間がやんわりと断って追い返してくれるのを期待してたのだが。
 ……他力本願の罰か。


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