LeliantⅢ


「……で、あんたは何を考えてる?」
 帝宮の正門前で。俺は彼女に言った。

 彼女――そう。少々金持ちと思わせる程度の服に身を包んだ、リーリアント皇女殿下に。

「ですから、お送りするついでに貴方のお屋敷にお邪魔しようと……」
「できるかぁっ!」

 さらりと言うリーリアの後ろには、皇室の紋章こそないが立派な馬車。

「お前な! 俺は貧民街に住んでんだぞ!? そこにこんなもんで乗り込んでみろ!」

 俺が言うと、リーリアは少し考え、
「少々お待ち下さいね」
 言い、馬車に入り、鞄やらを持って出てくる。背中には大きな包み。
「では、これで歩いて参りましょう」

「……あんた……意地でも俺についてくるつもりか」
「はい。勿論です」
「あんたと付き合うつもりはない」
 俺がきっぱり言うと彼女は首を傾げ、
「え? でも、恋人さんとは二年前にお別れになったのでしょう?」

 ……はあ。俺は溜息をついた。
「確かにそうだ。でも、だからってあんたと付き合う理由にはならねぇだろ?」
 可愛いことは認める。これが傭兵仲間で気が合えば、確かにそういうことも考えるかもしれない。
 しかし。これは皇女様だ。世間知らずの。
 こんなのの世話を焼くほど俺はお人好しじゃない。

「でも、私は貴方をお慕いしております」
「……俺の意思は?」
「ですから、お供して、貴方の御意思を変えて差し上げようと……」
「要らん。ドルメットの奴と仲良くしろ」

 言い、俺は一人で門の外へ歩き始める。
「ついでに言っとくと、俺は傭兵の仕事で明日の午後にこの街を出る。
 ……じゃあな。皇女様」

 彼女は何か言っていたが追いかけては来なかった。
 何を言っていたのか知らないのは、分からなかったんじゃなくて聞かなかったからなんだが。


◇◆◇◆◇