――朝。
俺は、外のただならぬ雰囲気に気圧されながらドアを開けた。
そこには、正規兵十数名と、馬車が一台。皇室の紋章入り。
「リルベルド・ディーマス」
兵士の隊長さんらしき男が、俺を見て言う。
「ジョーセッグ卿の養子となってもらう」
「……は?」
ジョーセッグってのは、かなりの有力貴族だ。何でンなもんが、平民の俺を養子に?
「断る」
「皇族命令だ。逆らうことは許されん」
間髪入れずに言うと、これまた間髪入れずに言ってくる。
「……皇族?」
「私です」
馬車から一人の美女が降りてくる。……って、おい。
「既に、貴方のお父様とお母様も『保護』いたしました。従っていただけますわよね? ディーマス様?」
にっこりと、恐い笑顔を浮かべて。
「権力を振りかざせと、貴方はそう仰いました。ですから、先ずは貴方に振りかざさせていただきます」
人懐っこい、柔らかな笑顔。
「あなたは今日から、ジョーセッグ様ですわ」
……じ、……じ、
「冗談じゃねぇえっ!」
「追いなさい!」
逃げる俺を、兵士が追ってくる。
無論、延々と逃げられるわけじゃない。親父とお袋も捕まってる。それでも俺は逃げたかった。
……これが、俺の責任、俺が選んだ道なのだとしても。
あの日の酒場での過ちを、俺は痛烈に呪っていた。
―― Fin ――

