翌日。俺たちは、セザーニの領地の隅にある、小さな洞窟に来ていた。
だが、『小さな』なんてのは外側だけ。中はこれでもかというほどの迷宮だった。
セザーニに雇われた調査員が、また罠を解除する。……罠のレベルが高いのかコイツらの腕が悪いのか、実は今まで五回ほど失敗して怪物をけしかけられた。
「……なあ、こんな遺跡、何があるんだ?」
何度も繰り返した問いだ。つまり、それだけ返事が無い質問。
例によって今回も返事は無かった。
広いホールに到着したのは、俺の槍をはじめ、敵にぶつかる武器が怪物の血でまみれてきた頃だった。
「……皆さん、お強くて助かります。ここまで調査が進んだのは初めてですよ」
二人の調査員の片方が言う。
「……おい! あったぞ!」
別の調査員が、広間の隅の柱を調べて言う。もう片方が駆け寄った。
「よし! これで……」
広間の中央に魔方陣が浮かぶ。光を発し―― 一瞬の後に、そこに一人の男が立っていた。
かなりの美男子。透けるような肌。そして何より――ゼニス・ブルーの髪。
――蒼穹の一族。太古の昔に滅びたと言われる伝説の種族だ。
「……違います」
ぽつりと呟いたのは、リーリア。
「あの方は生きておられません。幽霊……と言っては御幣があるかもしれませんが」
「蒼穹の守護者よ。我々は貴方の試練に打ち勝ちました。
どうか、封夢の玉をお授け下さい」
「封夢の玉ッ!?」
ティルが声を裏返す。
――封夢の玉。伝説にしか出てこないシロモノ。
噂じゃあ、それを手にすればどんな願いでも叶うって言われてる。
《……違うであろう?》
蒼穹の一族の男は、微笑を調査員に返す。そして――
「危ねぇ! 下がれ!」
俺が叫んだときにはもう遅かった。二人とも、消し炭になる。
《我が試練に打ち勝ったのはそなたらだ。
……さあ、最後の試練。我を倒してみるが良い》
唖然とする俺たちに、そいつは言った。
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