「ま、それがあんたのいいところだけどね」

 郁は鼻で笑ってそう言うと初めて雅史に向き合った。
 
 そこには普段以上にキッチリと制服を着こなした雅史が立っていた。

 普段はラフにしか結んでいないネクタイもキュッとしめている。

 彼もまた郁の伯父の葬式に出席する予定なのだろう。

 同級生の伯父の葬式に出席するのは少しばかり遠い関係のように感じたが、これが田舎なのだ。

 近所付き合い=親戚付き合い

 という公式が成り立ち

 近所の人=親戚同然

 なのだ。

「ちゃんと行くっておかん達に言っておいて」

 そう言うと鰐見台の手すりにひっかけておいたヘルメットを郁はかぶった。

「え?俺、メット持ってない……」

「誰があんたを乗せるって言ったよ」

 郁は仕返しをしてやったと言わんばかりに意地の悪い笑みを雅史に向けると軽快に鰐見台の階段をトントンと降りた。