鰐見台は小高い丘の上にあり海を見下ろすことが出来る場所だ。

 昔はそこで魚が来るのかどうかを監視し、上から指示を出していたらしい。

 勿論、現代の漁業で利用されることは無く今は観光地として活躍している。

 活躍しているといっても鰐見台のすぐ側に白い灯台があり、ほとんどの観光客はそちらに行く。

 雑木林の先にある一人か二人が立てる程度の小さな物見台には足を向けない。

 中に奇特な観光客がいたとしても、そこに先客である郁の姿を見付けると大半の人間は引き返してしまう。

 勿論、地元の人間はそんな場所に足を向けることは無い。

 そんなわけで実質、鰐見台は郁の憩いの場になっていた。

 そんな鰐見台の上で大の字になり晴れ渡る空を見上げため息をついた。

「やっぱり夢なのかな……」

 何度も自問自答した問題だ。