親や親戚は

「そんな所、行っちゃダメ!」

 と噂をうのみにして新しく出来たこの店に立ち寄ろうともしなかった。

『Love Diner(ラブ ダイナー)』

 と書かれた看板を横目に郁は

『立ち入り禁止』

 の文字がぶら下がるチェーンをまたぎダイナーの屋上に続く階段を駆け上がる。

 立ち入り禁止としてあるだけあり、手すりは所々、赤く錆びている。
 
 コンクリートの階段も足を置く場所を考えないといけない程、ボロボロだ。

 屋上に立つと眼下の海が目の前に迫りくる感覚に襲われる。

 絶景だ。

 そんな絶景を前に再び郁は大きく息を吸い込み、吐き出すと同時に体中の空気を押し出すように叫んだ。

「圭一圭一うるせーーんだよ!!!」