トンネルを三つ抜けた先にある

『恋人岬』

 で郁はバイクを止め、ヘルメットを取る。

 数分の間だが頭を覆うヘルメットからの解放感に郁は大きく息を吸う。

 鰐見台よりも強い潮の香りに海に近づいた実感を得た。

 ここにグアムの名所と同じ名前の『恋人岬』があるなんてバイクに乗ってウロウロするまで知らなかった。

 といっても本場の『恋人岬』とは似ても似つかない。
 
 そもそもグアムの恋人岬では結婚に反対された恋人達が投身自殺をした場所なのだが、ここの恋人岬は波が落ち合う場所という意味でつけられたらしい。

 確かにそうそう恋人達が投身自殺をされてはかなわないが、よく付けたものだと感心しているのは郁だけではなかろう。

 さらに

『ゲイカップルが経営している店がある』

 という噂の真偽を確かめることができたのも実際に来て初めてできたことだ。