そんなことを考えていると、辺りは真っ暗になった。


もう始まるんだ。



紗希はなんだか隣でニヤニヤしている。



…楽しみにしてたもんなぁ。



そんな彼女を見て、私にも笑いがうつったみたい。






___…。



映画を見終わった私たちは、行きつけのファーストフード店に居座ることにした。


「なんていうか…、もう、胸キュンだよね!胸キュンっ!」


一人でコクコクと頷きながらそう言ってはしゃぐ紗希。




物語はベタで、高校生の初恋を描いたもの。


だけど恋愛映画なんて久しぶりに見たせいか、紗希の言葉にも納得できる気がする。



「やっぱさぁ、ファーストキスってのは好きな人とのためにあるんだよね〜。」


紗希はいつもの調子でそう言って、ドリンクバーからもってきたコーラを喉に流し込む。



ファーストキス……。


そういえば私…、東堂渉にファーストキス、奪われちゃったんだ。