「何も知らない...って言ったら嘘になるけど...」



言葉を濁して桜井は口角をあげる。



「織川は、俺の口から聞くより...直接聞きたいんじゃない?」


「......っ。」



図星をつかれて、俺は言葉を失う。



こいつの何か見透かすような目は...嫌いだ。




「その代わり...織川。衿華ちゃんの心...いい加減に覗くんじゃねーぞ。」



今までと全く違った目つき、口調でそういう桜井。



いい加減に...?


「......んなことわかってる」


決意を示すように
俺は丸椅子から立ち上がり、桜井と視線を合わせた。



「傷つけんな...絶対に。これ以上、泣かせんなよ。」



...させるか......。



「泣かせない。泣かせるわけねーだろ...この俺が。」



それだけ言い残して、
俺は保健室の扉を開いて廊下に出た。



絶対...あいつの心を傷つけたりしない。