俺は2つの家を見上げる。

ゆりが育った家と、俺が育った家。

こんなに近いのに、今はすごく遠く感じる。

ピンポーン

俺はゆりの家のインターフォンを押す。

すぐに懐かしい声が聞こえてきた。

ガチャ

「・・・・・・夏樹くん?」

ゆりのおふくろだった。

「お久しぶりです」

「ゆりが何か言ったの・・・・・?」

「いえ、藍ちゃん、ゆりの友達にその、妊娠のこと聞いて。ゆりに会いに来ました」

「そう・・・・・。ゆり、夏樹くんに会うって言うかしら?今、夏樹くんの家に行ってると思うんだけど」

「わかりました。そっちに行ってみます」

「夏樹くん?」

おばさんに引き留められる。

「ゆりを、悲しませないで?お願い」

どういう意味かよくわからなかったけど、俺は頷いた。