「けんとっ!」

10分くらいして、けんとの名前を呼ぶ女性が走ってきた。

「ママッ!!!」

俺はけんとを降ろす。

「ありがとうございます」

けんとの母親は何度も頭を下げた。

「この子、目を離すとすぐどこかに行っちゃって」

俺はけんとの母親のおなかがふっくらしていることに気がつく。

「けんとお前、もうすぐお兄ちゃんになるのか」

俺がしゃがんでそう尋ねると、けんとは嬉しそうに笑って答えた。

「うんっ」

「じゃあお母さん困らせないで、カッコイイお兄ちゃんになれよ?」

「うんっ。お兄ちゃん、ありがとう」

けんとは俺が見えなくなるまでずっと手を振っていた。