「ゆり、あたしそろそろ行かなくちゃ間に合わないよ」

「そうなの?私10時過ぎから講義だから藍先行きなよ。私まだ出れないし」

あたしは時計に目をやる。

「本当?1人で大丈夫なの?」

「藍心配しすぎだよ。まだまだ元気だから」

それはそうなんだけど、心配だよ。

「いいの?」

「うん、気をつけてね」

こっちの台詞だよ。

玄関で靴を履く。

ヒールなんて履いて来なきゃよかった。

走れないじゃん、靴に文句を言う。

「じゃあ先行くからね?」

ドアに手をかける。

「あっ、藍?」

「何?」

「私、今日親のところ行ってくるね」

「・・・そっか、ちゃんと言うんだよ?」

「大丈夫。あっ、藍早くしないと!!」

「わっ、じゃあまたあとでね」

小走りで部屋を出る。