ここが何処かは分からないが、たくさん歩いたと思う。
山道みたいな道を歩いて、たまにすれ違う人は、まるであたしたちが見えてないよう。
あたしの隣にこんな派手…っていうか目立つ(顔が)人がいるのに、誰とも目が合わない。
「…変なの……来る人行く人あたしたちが見えてないみたい」
「見ようとせんものには儂らは見えん」
ポツリ、と呟くと、京次はそう言った。
前にも言うたろ?と。
「ひっ!!?」
急に、彼は腕をひいてあたしを抱き寄せた。
そして近くにあった木の陰に隠れる。
「ちょっ」
「シィー…」
彼は妖艶な笑みで言い、ここから外の様子をうかがう。
近くでなにかあったのだろうか。
だけど、彼は何故か楽しそうだ。
なんでかわからないけど、わくわくしている?
「……………………」
あたしもそっと覗いて見ると、背の小さい人と背の大きい人が……な、何あれ?
手合わせ?
をしていた。
飛んで跳ねて、着地して、二人が接近して。
…と、ドボンっと背の大きい人が近くにあった池に落ちる。
なんだこれ?
と言うように京次を見上げると、得意げな顔をした京次が真っ直ぐ前を見ていた。
「覗き見とは随分だな、京次」
声のする方を見ると、さっきの背の低い女の人がいた。
腰まである長い髪は艶やかで、童顔だが凛として綺麗な人だ。
あれだけ動いていたのにも関わらず、全く息が乱れてない。
「流石じゃの、淋(リン)」
「嫌味か?」
少し間をおいていう淋さんは、京次に挑戦的な目を向ける。
「褒め言葉じゃ」
「………………………」
だけど彼女は納得していないようだった。


